履修証明プログラム「大学マネジメント人材養成」大学マネジメントセミナー

 大学マネジメントを取り巻く先端的な動向や優れた実践事例(グッド・プラクティス)を学ぶモジュールです。実績を上げている大学の経営責任者(学長や理事など)、意欲的な取り組みを重ねている現場の担当者、関連領域の専門家(実務家や研究者)、政策担当者などを講師として招き、同時代的に開発されつつある現場の知識や技術について総合的な理解を得ることを目的としています。

近年の開催記録は、以下の通りです(肩書きは講演当時のものです)。

 

2023年度開講

 

2022年年度開講

テーマ:高等教育政策の最新動向
日時 2022年7月14日(木)
演題 新しい資本主義に向けた改革と大学について
講師 井上裕之氏 内閣府審議官

 

2021年度年度開講

 

2020年度開講

テーマ:大学マネジメントの基盤的知識
日時 2020年12月10日(木)
演題 近未来の大学
講師 德永保氏(帝京大学特任教授・筑波大学客員教授)

 

2023年度大学マネジメントセミナー

第1回セミナーテーマ 高等教育政策の最新動向
演題 産学官・地域連携施策のビジョンと高等教育政策の最新動向
講師 井上睦子氏 文部科学省高等教育局国立大学法人支援課長
日時 2023年12月27日(水) 14時00分〜16時00分
 所得向上と地方の成長、成長力の強化と高度化、人口減少を乗り越える社会変革の推進、国民の安全・安心の確保など、山積する政策課題の実現に向けて、知の拠点である大学に対して、産学官連携や社会連携のますますの強化が要請されています。この困難な課題の達成に向けて政府は、資金の提供に加えて、大学を支援するためのさまざまな施策を展開しています。その柱の一つが、イノベーションを通じた生活や社会の革新を目標とし、急速な成長を目指す組織、すなわちスタートアップの育成です。大学発のスタートアップ育成を通じて、社会課題をスピード感を持って解決していくと同時に、市場の活性化や生産性向上を実現する、という明快なビジョンに基づく施策です。
 周知の通り、社会的課題を成長のエンジンへと転換して持続可能な経済社会を実現する「新しい資本主義」の実現に向けた主要施策として、令和4年1月、スタートアップ育成5ヵ年計画が決定されました。5年後の2027年度に現在の10倍を超える10兆円規模の投資額を実現するという意欲的な目標が掲げられ、昨年6月からの1年間ですでに1兆円規模の事業予算が措置されています。本年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」でも、人材・ネットワークの構築、資金供給の強化と出口戦略の多様化、オープンイノベーションの推進という3本柱が掲げられ、大学を対象とした多様な具体的施策も公表されています。そこで求められているのが、施策のビジョンや課題達成に向けた仕組みの設計等に関する、政策主体と大学の間のコミュニケーションの活性化です。
 11月の令和5年度補正予算案に続き、年末には次年度予算案の閣議決定が見込まれています。今回のセミナーでは、文部科学省より政策責任者をお迎えし、産学官連携や社会連携活動を導く新たなビジョンと施策の展望、そして次年度予算も含めた最新の高等教育政策の動向とその背景にある理念について理解を深めるとともに、これからの大学の発展方策について考えていきます。
 なお、講演記録は『大学マネジメント』2024年2月号(通巻224号)に収録されています。

<講師ご紹介>
文部科学省高等教育局国立大学法人支援課長(講演当時)
東京大学国際部長、大臣官房国際課国際戦略企画室長、高等教育局大学振興課大学改革推進室長、私学部私学助成課長、内閣府政策統括官付参事官(オープンイノベーション担当)、科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課長などを歴任。2023年7月より現職

 

2022年度大学マネジメントセミナー

第1回セミナーテーマ 高等教育政策の最新動向
演題 新しい資本主義の実現に向けた改革と大学について
講師 井上裕之氏 内閣府審議官
日時 2022年7月14日(木) 14時00分〜16時00分
 2021年11月に発足した第2次岸田内閣では、未来を切り拓く「新しい資本主義」というビジョンが掲げられ、中核となる成長戦略と分配戦略の実現に向けて、あらゆる政策を総動員する体制が整備されてきました。そこでは、成長戦略の柱となる科学技術・イノベーションの振興、そして分配戦略の基盤となる「人への投資」の抜本強化にむけて、大学が主要アクターと位置づけられています。日本国の未来を賭けたビジョンの具現化に向け、これまでの高等教育政策のありかたを刷新するような大きなインパクトを有する、空前の規模とスコープを備えた大学に対する投資構想が進められています。 科学技術・イノベーション振興では、大学改革が筆頭課題とされ、10兆円規模の大学ファンドの創設やマネジメント改革、学部再編、地域中核・特色ある研究大学総合振興などが具体のテーマとして掲げられました。人への投資の抜本強化では、成長分野を支える人材の確保・育成や学び直しを支援するリカレント教育の中心地となることが、大学に対して強く要請されています。施策の具体展開に向けた政策議論は、教育未来創造会議の第一次提言「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について」(2022年5月)や「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」(新しい資本主義実現会議, 2022年6月予定)、そして「経済財政運営と改革の基本方針 2022」 (経済財政諮問会議, 2022年6月予定)などを通じて急速に進展しています。
 今回のセミナーでは内閣府より政策責任者をお迎えし、 目指すべき新しい資本主義の姿とその具現化に向けた構想の全体像について理解を深め、高等教育に対する異次元の投資プログラムの最新動向について解説をいただくとともに、官民と学とが一体となって実現すべきアウトカムについて考えていきます。

<講師ご紹介>
内閣府審議官(講演当時)
1986年 大蔵省採用。財務省主計局主計官、主税局総務課⻑、大臣官房文書課⻑、内閣府政策統括官などを歴任。2021年9月より現職(講演当時)

 

第2回セミナーテーマ 高等教育政策の最新動向
演題 高等教育政策の現状と今後の方向性について
講師 池田貴城氏 文部科学省高等教育局長
日時 12月23日(月) 16時00分〜18時00分
 高等教育政策が大きく動きつつある。2018年に出された「グランドデザイン答申」では周知の通り、2040年の高等教育が求められる役割が展望されたが、それ以外にも、教育再生実行会議の12次にわたる提言や、総合科学技術・イノベーション会議による答申や意見具申、そしてさらには未来教育創造会議の第一次提言などを通じて、高等教育に関する政策は、内閣府の主導により大きく進展することになった。グランドデザイン答申が22年先を見据えて設定したスコープを超えて「新しい資本主義」という国家的ビジョンが掲げられ、成長戦略の柱となる「科学技術・イノベーション」の振興、そして分配戦略の基盤となる「『人への投資』の抜本強化」の実現にむけて、大学が主要アクターとして位置づけられ、これまでにない巨額の予算が投じられることとなったのである。
 そこで大学に対して期待されているのが、多様なミッションの実現であり、学びのセーフティネット構築である。高等教育機関の多様なミッションの実現にむけて、周知の通り、基盤的経費の充実や客観的指標に基づいたメリハリある補助金配分がこれまで進められてきた。この10月には、大学設置基準の大幅改正も行われた。この土台の上に、10兆円ファンドを活用した国際卓越研究大学では基本方針のなかで「世界最高水準の研究大学の実現に向けた「変革」への意思(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき実施する」ことが明記された。また地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージでは、実力と意欲を持つ大学に対して、自身の強みや特色を最大限発揮し、地域社会の変革や我が国の産業競争力強化、グローバル課題の解決にむけて大きく貢献することが期待されている。他方、学びのセーフティネット構築に向けて、高等教育の修学支援新制度の拡充に加えて、産業界と一体になり高度のリスキリング教育を提供するための大学院の構造改革等が進められつつある。
 今回のセミナーでは文部科学省より政策責任者をお迎えし、高等教育機関の多様なミッションの実現に向けて、次年度予算を含めた最新の政策動向とその背景にある理念について解説をいただくとともに、これからの大学のあり方について考えていきます。
 なお、講演記録は『大学マネジメント』2023年7月号(通巻217号)に収録されています。

<講師ご紹介>
文部科学省高等教育局長(講演当時)
1989年文部科学省入省。 米国国立科学財団(NSF)派遣、高等教育局大学振興課長、初等中等教育局財務課長、日本スポーツ振興センター理事、教育再生実行会議担当室長、研究振興局長などを歴任。2022年9月より現職(講演当時)

 

2021年度大学マネジメントセミナー

第1回セミナーテーマ 大学マネジメントの新領域
演題 大学子会社から信頼されるパートナーへ
   大学における価値創造を推進する独立経営体の可能性
講師 三浦暁氏 ㈱早稲田大学アカデミックソリューション代表取締役社長執行役員 早稲田大学総務部調査役
日時 12月17日(金) 15時00分〜17時00分
 早稲田大学が業務を委託する子会社として2004年8月に設立された株式会社早稲田総研は、研究支援業務を担当する早稲田総研イニシアティブの分離、遠隔教育を行う早稲田大学ラーニングスクエアおよび語学教育を行う早稲田大学インターナショナルとの合併(いずれ も2007年)などを経て、2014年に株式会社早稲田大学アカデミックソリューションへと合併・名称変更を行い今日に至ります。大学に特化した知識・経験・専門性を強みとし、大学 運営支援、教育支援、国際化支援、研究支援、情報化支援、社会連携等の領域でサービスの提供を行っています。
 当初は経費削減を主目的として発足した子会社の役割が、15年余の時を経て気が付いてみると、新たな価値創造を強力に推進する大学のパートナーへと変容しつつあります。では なぜいまこのような変容が起きつつあるのか、このような変容を可能にした要因とは何か、 いかにしてこの動きをさらに推し進めていくことができるのか。このような問題意識のもと、大学における価値創造を推進する子会社の発展可能性を模索していくことが、今回の講演テーマです。  民間企業としての独立性を生かしつつ、パートナーとして大学との相互理解と信頼関係に 基づいた試行錯誤を続けるなかで、どのような変容が起きつつあるのか。具体事例を織り込 みながら、大学子会社の新たな可能性について解明していきます。

<講師ご紹介>
㈱早稲田大学アカデミックソリューション代表取締役社長執行役員、早稲田大学総務部調査役(講演当時)
1989年に早稲田大学入職、人事部人材開発担当課長、人事課長、人事部長等を経て、2019年12月より現職(講演当時)。著書は「専任職員採用の工夫と今後の課題」『大学時報』320号(2008年)、「早稲田大学におけるプロジェクト型業務の実践をとおした職員人材育成」『私学経営』454号(2012年)、「職員業務の構造改革と業務委託の活用 : 早稲田大学の事例から」『IDE現代の高等教育』 628号(2021年)など。

 

第2回セミナーテーマ 高等教育政策の最新動向
演題 「橋本行革からデジタル臨調」と大学政策-「強い官邸」が賢い選択をするために-
講師 合田哲雄氏 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官
日時 12月27日(月) 15時00分〜17時00分
 2001年の中央省庁再編にあたり、政治主導を実現するのための行政改革が行われ、総理大臣の権限強化を実現するため、内閣官房の機能強化と内閣府の創設がなされました。内閣 府に設置された経済財政諮問会議の答申「経済財政運営と改革の基本方針」が高等教育政策 についても大きく方向づけていることは周知の通りです。本年9月に廃止が決まった教育再生実行会議もまた、内閣府に担当室が置かれており、12次にわたる提言を通じて高等教育 の発展に大きな影響を及ぼしてきました。
 内閣官房に設置された科学技術・イノベーション推進事務局が事務局機能を担っているのが、総合科学技術・イノベーション会議です。同会議では、内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下で各省より一段高い立場から、科学技術とイノベーションの振興に向けて大学のあり方を定める政策について、企画立案及び総合調整が行われています。 基本政策としての科学技術基本計画に加えて、現在、世界と伍する研究大学専門調査会においていわゆる10兆円ファンド構想について、議論が進められています。内閣府には、これらに加えて統合イノベーション戦略推進会議が設置されており、そこでは地域の中核となる大学の機能強化に向けた政策パッケージ等について議論が進められています。
 今回のセミナーでは、高度複雑化した高等教育に関する政策策定プロセスの全体像について解説をいただくとともに、政策と大学の間のコミュニケーションの強化に向けて、新年度予算を参照しつつ、政策の狙いや大学への期待等について語っていただきます。
 なお、講演記録は『大学マネジメント』2022年3月号(通巻201号)に収録されています。

<講師ご紹介>
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官(講演当時)
1992年旧文部省入省。高等教育局大学課課長補佐(国立大学法人化担当)、NFS(全米科学財団)フェロー、高等教育局企画官、研究振興局学術研究助成課長、初等中等教育局教育課程課長、同財務課長、科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官などを歴任。著書は、『学習指導要領の読み方・活かし方』(教育開発研究所 2019)、『学校の未来はここから始まる』(教育開発研究所 2021,共著)、『メディアリテラシー クリティカルシンキング(吟味思考)を育てる』(時事通信社出版局 2021,共著)など。

 

2020年度大学マネジメントセミナー

第1回セミナーテーマ 高等教育政策と財政
演題 日本の経済・財政からみた大学の現状と課題
講師 神田眞人氏 財務省国際局長
日時 11月12日(金) 15時00分〜17時00分
 財政が危機的状況にあるなか、令和3年度の文部科学省概算要求では、「新たな日常」の実現や、Society5.0時代に向けて、我が国の成長・発展を牽引する高等教育への転換のため、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)等を踏まえ、「学生の学びの確保」、「教育の質向上」、「教育研究基盤の強化」を一体的に推進する-高等教育局-という目標が掲げられ、総額では前年比11.4%増の5兆9,118億円が提示されました。もちろん大学理事者や文部科学省関係者は、我が国の大学が現在厳しい状況に直面しており、改革が必要であることを十分に理解しています。いま問題となっているのは、激しい環境変化に対応していく改革のスピートと深度なのではないでしょうか。
 セミナーでは、我が国の経済財政状況や政策環境等についてエビデンスにもとづいて理解を深めたうえで、大学のおかれた問題状況と今後の課題について展望していただきます。 質疑応答に加えて講演の最後に、参加者との間で、立場を離れた自由な意見交換を行う時間を設ける予定です。
 なお、講演記録は『大学マネジメント』2020年1月号(通巻187号)に収録されています。

<講師ご紹介>
財務省国際局長(講演当時)
1987年に大蔵省入省、世界銀行理事代理、財務省主計局主計官(文部科学、経済産業、環境、司法警察、財務予算等担当)、金融庁参事官、財務省主計局次長(筆頭)、財務省総括審議官などを歴任。東京大学法学部卒、オックスフォード大学経済学大学院修了(M.Phil)。令和2年7月より現職。近著に『金融規制とコーポレートガバナンスのフロンティア』(財経詳報社, 2018)、『超有識者達の慧眼と処方箋―強い文教、強い科学技術に向けて〈3〉』(学校経理研究会, 2018)、「財政金融・政治・学問」三谷 太一郎編著『近代と現代の間』(東京大学出版会, 2018)、"Flexibility and Proportionality in Corporate Governance" (ed. OECD 2018)、 "Corporate Governance Factbook 2019" (ed. OECD2019) など。

 

第2回セミナーテーマ 大学のトップマネジメント
演題 開学17年目を迎えるデジタルハリウッド大学の現状と展望
講師 杉山知之氏 デジタルハリウッド大学・学長
日時 11月20日(金) 18時45分〜20時45分
 デジタルハリウッド大学は、1994年より運営している社会人を主対象とした専門スクール「デジタルハリウッド」の運営ノウハウを大学運営に転換し、2004年に日本初の株式会社立専門職大学院として発足しました。株式会社立大学として、今春開学17年目を迎えようとしています。
 ここ数年では、経済産業省による「産業技術調査事業(大学発ベンチャー実態等調査) 」において、総収容定員1,160名という規模でありながら「大学発ベンチャー企業数 」のランキングでトップ10前後に位置するなど、着実に成果を上げてきました。また大学基準協会による認証評価では、大学発ベンチャーの創出に加えて、日本のコンテンツの海外展開や、学内でのビジネスプランのコンペ等を通じた学生の起業支援などについても高く評価されています。
 セミナーでは、建学以来デジタルハリウッド大学学長を務める杉山知之氏をお招きし、株式会社としてのデジタルハリウッド大学の運営哲学やダイバシティー溢れるカルチャーを創出するノウハウ、最新の技術や社会動向を踏まえた今後の展望などについて語っていただきます。

<講師ご紹介>
デジタルハリウッド大学・学長(講演当時)
1954年東京都生まれ。87年よりMITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年国際メディア研究財団・主任研究員、93年日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月デジタルハリウッド設立。2004年日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」を開学。翌年、「デジタルハリウッド大学」を開学し、現在、同大学・大学院・スクールの学長を務めている。2011年9月、上海音楽学院(中国)との合作学部「デジタルメディア芸術学院」を設立、同学院の学院長に就任。VRコンソーシアム理事、ロケーションベースVR協会監事、超教育協会評議員を務め、また福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議会長、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員など多くの委員を歴任。99年度デジタルメディア協会AMDアワード・功労賞受賞(講演当時)。著書は「クール・ジャパン世界が買いたがる日本」(祥伝社)、「クリエイター・スピリットとは何か?」(ちくまプリマー新書)ほか。

 

第3回セミナーテーマ 高等教育政策の最新動向
演題 新型コロナウイルス感染症時代の新しい大学教育の展開
講師 森 晃憲氏 文部科学省大臣官房審議官(高等教育局担当)
日時 12月4日(金) 18時30分〜20時30分
 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、短期間のうちに大学教育のあり方が大きく変わりつつあります。学事日程や遠隔授業、実技・実習、教育体制、成績評価方法等の取り扱いに関する弾力的運用や、教育職員免許法施行規則等の一部改正など迅速な政策対応が行われ、同時に各大学による様々な工夫もあり、学生の学修機会の確保にむけた取り組みが着実に進められてきました。
 その一方で、学生の学びの保障に向けて依然として多くの課題が残されています。特に大都市圏の大学では、対面授業の再開は一部に限定されており、豊かな人間性を涵養する上で必要とされる直接の対面による学生同士や学生と教職員の間の人的な交流や、あるいは多岐にわたる有意義な正課外教育活動の活性化に向けて、様々な議論が展開されています。来春の入学試験対応や10月から再開された外国人留学生の受け入れなど、新たな課題にも事欠きません。
 地方創生やグローバル人材育成、SDGsの達成など多くの期待が寄せられるなか、オンラ イン教育と対面教育を組み合わせたハイブリッド型で進められることになる大学教育は、今後どのような形で発展していくのか。セミナーでは、令和三年度の文部科学省予算の動向等をふまえながら、これからの大学教育のあり方について考えていきます。

<講師ご紹介>
文部科学省大臣官房審議官(高等教育局担当)(講演当時)
1986年文部省入省。鹿児島県教育委員会学校教育課長、在ジュネーブ日本政府代表部一等書記官、文部科学省学術機関課長、私学行政課長、高等教育企画課長、大学改革支援・学位授与機構理事などを経て、2018年10月より現職(講演当時)。

 

第4回セミナーテーマ 大学マネジメントの基盤的知識
演題 近未来の大学
講師 德永保氏 帝京大学特任教授・筑波大学客員教授
日時 12月10日(木) 18時30分〜20時30分
 この半年間で、大学における教育研究の現場では、オンライン授業の全面的導入をはじめとする大変革が起きています。 新型コロナウイルス感染症は、周知の通り、大学のICT革 命やデジタル・トランスフォーメーションの加速する大きな契機となりました。その一方で、大学の「ニュー・ノーマル(新たな常態)」を展望するためには、このトリガー要因に 過度にとらわれることなく、顕在化した現象の底流にある本質的な変化について歴史的な視点から理解を深めていくことが必要です。
 しばしば指摘されているように、今日の大学は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの特性に象徴される予測困難な社会経済環境、VUCAの時代に直面しています。そこでは、これからのAI、IoT時代を生きていく学生に対してどのような能力を習得させればよいのか、大学教育のあり方が抜本的に問われています。大学の商業化や研究活動の組織越境(オープン・イノベーション化)は、大学制度の根幹にある「大学の自治」を大きく揺さぶりはじめています。第四次産業革命あるいはSociety 5.0の到来によってもたらされる社会の大変革についてすでにさまざまな機会を通じて活発に論じられています。これからの大学マネジメントを担う人材にも、中世以来続いてきた大学制度が今後どのような変貌を遂げていくか、最新動向を踏まえたビジョンを更新し続けて行くことが求められることになるでしょう。
 大学の商業化や科学研究システムの変容、第四次産業革命の到来は、大学の教育研究活動やマネジメントのあり方にどのような変化をもたらすことになるのだろうか。講演では、変化を主導する先端的政策の動向やそのインパクトなどを参照しつつ、大学という特殊な社会制度の近未来の姿について展望していただきます。

<講師ご紹介>
帝京大学特任教授・筑波大学客員教授(講演当時)
前筑波大学教授・大学執行役員・大学研究センター長。1976年に文部省入省、文部科学省研究振興局長、高等教育局長、国立教育政策研究所長などを歴任(講演当時)。編著書に『グローバル人材育成のための大学評価指標』『教育法規の基礎理解』『グローバル人材の育成』(いずれも協同出版)『現代の教育改革』(ミネルヴァ書房)など。

 

 

 


筑波大学履修証明プログラム
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