筑波大学大学院 人間総合科学学術院は、26の学位プログラムを含む一つの研究群と3つの専攻で編成しています。人間の多様な側面を探求し、教育学、心理学、障害科学、医学、スポーツ科学、芸術学、情報学など、多岐にわたる専門分野を有しています。学生は自分の興味に応じて専門性を深めると同時に、他分野との連携を図ることができます。
人間総合科学学術院の人材養成目的
人間の心や体、さまざまな活動について、基礎から応用まで幅広く深く学べる高度な教育・研究を行います。この教育・研究を通して、それぞれの学問領域でグローバルな視点を持ち、計画的に研究を進められる研究者や大学教員を育成します。国際的で学際的な環境の中で、異なる分野を組み合わせた先進的な研究を実施できる力を身につけられます。また、複合的な視点から人間を捉え、柔軟で適切な援助・支援を設計して実践できる高度な専門職業人を育成し、社会の多様なニーズに応えていきます。
この目的を実現するために、人間総合科学学術院では、二つの研究科を加えることで、より充実した教育研究体制を作り上げました。一つは人間の多様な活動を支える知識と情報の基盤について学際的に研究してきた図書館情報メディア研究科です。もう一つは教育研究科で、幅広い学問分野を教育の観点から総合的に捉え、高度な教育者を育ててきました。現在は26の学位プログラムと3つの専攻を含む、新しい一つの学術院・研究群を編成しています。
本学術院では、国際的かつ学際的な教育・研究環境を活かし、知の最先端の融合と再構築を進め、「人間」に関する新たな知識体系を創造・発展させることが可能です。知識の活用や伝達において、より複合的な視点から多様な人間の在り方を捉え、社会のニーズや地球規模の課題に対応できる高度な知識と技能を持つ人材を育成することを目指します。
なお人間総合科学学術院に所属する学術群、3専攻(スポーツ国際開発学共同専攻、大学体育スポーツ高度化共同専攻、国際連携食料健康科学専攻)の人材養成目的は次の通りです。


人間総合科学学術院コンピテンス
大学院を修了すると、専門性の高い知識や技能を習得できます。しかし、成績表だけでは、具体的に具体的な習得内容を十分に示せません。そこで筑波大学では、修了時までに身につけるべき知識や技能を「コンピテンス」として設定し、その習得度を測る「達成度評価」を導入しています。学位取得には、必要な「コンピテンス」を「達成度評価」で証明する必要があります。学位は、こうした知識や技能の習得を証明するものです。なお、コンピテンスには、各学位プログラムが設定する「専門コンピテンス」に加え、学術院や大学全体で定める「汎用コンピテンス」も含まれます。「汎用コンピテンス」とは、特定の専門分野に限らず、幅広い局面で活用できる知識や技能を指します。


人間総合科学学術院の組織
筑波大学大学院は、2020年度に3学術院6研究群へと改組再編し、学位プログラム制へ全面移行いたしました。研究群内ではひとりの教員が複数の学位プログラムを担当しており、分野を超えた担当と協働指導を行っております。また、学術院・研究群を教員の所属組織である系とは明確に分離させた組織といたしました。
令和7年度 人間総合科学学術院-研究群 運営委員会委員(PDF)

特色
筑波大学大学院では、専門分野を超えた学びを通じて「人間力」を養うことを重視しています。「大学院共通科目」と「学術院共通専門基盤科目」を設け、専門知識の深化と幅広い視野の育成を両立させるカリキュラムを提供しています。また、国際性の促進にも力を入れ、13か所の海外拠点や300件以上の交流協定を活用し、留学生や教員との日常的な交流が可能な環境を整えています。さらに、社会人の学び直しを支援する制度も充実しており、働きながら学びたい人の入学を積極的に受け入れています。筑波大学大学院 人間総合科学学術院は、学際的な学びと国際交流、そして学習の支援を通じて、多様な学生の成長を後押しする場となっています。

人間総合科学学術院憲章の趣旨
大学は、学問の自由を尊重し、高度な教育および学術研究の府として、有為な人材の育成や新たな知識と技術の創造と活用、学術文化の継承と発展等を通じて、学問の進歩と社会の発展に寄与するという使命と責務を担っている。人間総合科学学術院は、「人間」を総合的に科学する学術の府として、先端的学術研究を高度かつ横断的な教育研究へと展開し、誕生から死に至るまでの健やかな成長や豊かな学び、生き方の真理を探究し、新たな知見の創造を目指す。また、個別性・多様性・持続可能性を包摂する視座に立脚し、その叡智を結集・発展・拡張・継承することにより、人間の幸福と社会の発展に貢献することを使命とする。
人間総合科学学術院は、2001年に設置された人間総合科学研究科を基盤とし、21世紀COE、リーディング大学院、卓越大学院等のプログラムを活用した研究促進、中央教育審議会の答申やガイドラインに基づいた教学マネジメントの確立を通した教育改革を踏まえ、2020年の学位プログラム化により設置された。
さらに、2023年には、開学の理念である「開かれた大学」を具現化し、世界を先導する研究の推進、社会を変革する人材の養成、重要学問の継承と発展、教育機会均等の確保といった課題に自律的に取り組むため、全学術院を横断的かつ先進的に牽引する組織として学術院総合戦略本部を設置した。
以上を踏まえ、人間総合科学学術院は、あらゆる壁を超越する思想の下に、その使命と責務を自覚し、適切な教育研究の水準を維持するとともに、世界水準の研究の推進、学問の継承と発展、教育機会均等の確保などを通じて、高い知性を備えた人材を育成し、人類社会の発展に貢献していく。
本憲章は、全学的教学マネジメントおよび教育研究ガバナンス体制のもと、人間総合科学学術院における自己点検·評価の実施の基礎となるものである。また、学術院・研究群・学位プログラム・専攻の各組織において、創造的な知性と豊かな人間性を備えた人材の育成に資する教育研究の質を維持し、構成員相互および学術院総合戦略本部を介した組織間における敬愛と協働の精神の下、その向上と充実を図るための基本的な使命を定めるものである。
◆ 憲 章
(教育理念・人材養成目的)
1.創設の理念と人類社会の変化・社会動向に基づき、人材養成の目的・目標を明確に設定し、3つのポリシーによって具体的に公表する。
(学位授与の方針(DP:ディプロマ・ポリシー))
2.人材養成目的に基づき、学位授与の方針ならびに学修成果の評価を明確かつ合理的に設定する。
(教育課程編成・実施の方針(CP:カリキュラム・ポリシー))
3.学生がDPに記述されたコンピテンスを適切に獲得するための教育の課程、教育研究指導体制、達成度評価・学修成果の評価体制を確立し、実施・公表する。
(入学者受入の方針(AP:アドミッション・ポリシー))
4.人材養成目的、DP・CPを踏まえて、適切な入学者受入方針を設定・公表し、公正な学生の選抜を行う。
(学生への学修支援)
5.学位プログラム・専攻に対する学生のエンゲージメントを最大限に高め、社会からの期待に応える学修成果を達成するための学修研究や学生生活に関する適切な支援方針を定め、実施する。
(研究・研究環境・社会貢献)
6.教育研究活動の改善と活性化、国際社会との連携交流を通じた社会貢献を促進するため、関係する教員組織と相互に協力して適切な教育研究環境の整備を支援する。
7.研究の公正性は、学生および教員による高度な研究の維持と推進の基盤であることから、その向上を図るための包括的かつ具体的な取り組みを継続的に実施する。
(ファカルティ・ディベロップメント)
8.教育研究の質を継続的に向上させることを目的に、組織的な研究・研修(FD:ファカルティ・ディベロップメント)を実施する。
(点検・評価)
9.教育研究の水準を維持・向上させるために、組織運営や教育研究活動について不断に点検・評価し、その結果を改革・改善に反映させる。
(情報公開)
10.組織運営や教育研究活動および点検・評価結果について情報公開し、社会の公器としての説明責任を果たす。
(管理運営)
11.教育研究の一体的かつ効率的な活動の実現を目指して、構成員の意見を汲み入れながら自主的・自律的に運営する。
◆ 設立・創立主旨
地球規模で山積し、拡大を続ける社会的課題や、多様化・複雑化する社会環境の下、「人間」を理解し、研究することの重要性はますます高まっている。人間総合科学学術院は、こうした時代の要請に応えるとともに、本学の特色である「国際性」と「学際性」を具現化することを目的として、2001年に創設された人間総合科学研究科を前身としている。
人間総合科学研究科は、人間系(教育学、心理学、障害科学)、体育系(体育学、体育科学)、芸術系(芸術、世界遺産、世界文化遺産学)、医学系(基礎医学、臨床医学、社会医学、看護科学)の各分野が結集し、それらの協力のもとヒューマン・ケア科学、感性認知脳科学、スポーツ医学の3つの学際研究領域を創設することで、共通の研究対象である「人間」をキーワードに幅広くかつ深く研究する全く新しいタイプの統合研究領域として誕生した。その後、従来の研究科の枠にとらわれない学際的な研究を発展させ、緩やかな統合のもとに「人間」に関する科学を推進してきた。そして、2020年度の大学院改組再編により、人間総合科学研究科、図書館情報メディア研究科および教育研究科を基礎とし、幅広く多様な39の学位プログラムからなる人間総合科学研究群に、大学を越えた連携を行う3つの専攻(大学体育スポーツ高度化共同専攻、スポーツ国際開発学共同専攻、国際連携食料健康科学専攻)を加えた人間総合科学学術院が編成された。
この間、従来のディシプリン型の学問分野の拡充のみならず、新たな学際融合型領域の創成にも取り組んできた。人間の生物・身体的側面、教育・福祉的側面、精神・文化的側面の三側面を視野に入れ、人間に関する多面的知識を基礎とした「人間に関わる総合科学」の確立を目指している。その中で、優れた先端的研究や独創的な学際的研究ができる研究者の育成に加え、人間の諸問題に現実的かつ柔軟に対処できる高度専門職業人の育成にも力を注いでいる。
[教育理念と人材養成の目的]
本学術院は、「人間」に関する基礎から応用に至る高度な教育・研究を展開し、ますます高度化・複雑化する地球規模課題の解決に向けてパラダイムシフトを可能とする総合的視点と独創的な研究能力を備えた人材の育成を通じて、人類社会の未来に貢献することを目的とする。
[養成する人材像]
幅広く国際的な視野と総合的な知識・技能を養うとともに、それぞれの固有の学問領域においてさらに高度な研究を計画実行できる研究者、および「人間」に関して幅広い知識をもち優れた学際研究を計画実行できる研究者、さらには、複合的な視点から「人間」をとらえ、さまざまな生き方をしている「人間」の能力を最大化するために柔軟かつ適切な支援を企画実行できる高度専門職業人を養成する。
[教育目標]
幅広い国際的な視野と総合的な知識・技能を養うとともに、自立的かつ創造的な高度の研究能力および専門実務能力を養い、自らの知的蓄積に基づいて独自の問いを立てることのできる未来社会の担い手を育成することを目標とする。
[学位授与の方針]
総合智教育の理念に基づき、修士課程(博士前期課程)では、知の活用力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、チームワーク力、国際性、研究力、専門知識、倫理観を、博士課程(博士後期課程)では、知の創成力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ力、国際性、研究力、専門知識、倫理観を、それぞれの学位プログラム・専攻が定める水準で身に付けていることを確認する。そのうえで、学位論文に係る評価基準および最終試験に係る基準を満たしたと認められる者を学位授与の対象とする。
[課程編成・実施の方針]
学術院としての学位授与の方針に加えて、学位プログラム・専攻ごとに教育課程編成・実施の方針を明確に定め、公表・実施する。
[入学者選抜方針等]
国際性と学際性あるいは多様性と総合性を基調とした柔軟かつ弾力的な入学要件、選抜方式、選抜基準を掲げる。また、幅広い地域から留学生、社会人、編入学生等を積極的に受入れ、国費・私費外国人留学生への特別の配慮をはじめ、社会人特別選抜、昼夜開講制大学院、連携大学院、協働大学院などの多様な選抜方式、および小論文や面接を取り入れた多面的な選抜基準を特色としている。
[教育の特色]
1 人間総合科学学術院は、大学院設置基準第7条の3の規定により研究科相当の教育研究上の基本組織として設置され、研究群を専攻相当の組織として置くことで、研究群に配置された学位プログラムにおいて、分野を超えた協働指導体制が可能となり、本学の大学院課程における教育研究体制のより自律的・発展的な改善や展開の可能性を拡充する。また、本学学術院全体を視野に入れた教育研究の不断の改善活動を支援するための組織である学術院総合戦略本部においては、先端的学術研究を高度で横断的な教育研究に展開する体制を支えている。
2 修学成果を高度化するために、複数教育指導制を取り入れ、修学者本位の幅広い助言やきめ細かい指導を行っている。
3 学術院共通専門基盤科目の充実に加えて他学位プログラム・専攻からの単位取得を幅広く認め、複合的視点から人間を捉える研究の推進を可能にしている。
4 連携大学院制度を心理学、ニューロサイエンス、スポーツウエルネス学、デザイン学、パブリックヘルス、スポーツ医学、医学の各学位プログラムにおいて、協働大学院をスポーツウエルネス学学位プログラム(スポーツウエルネスマネジメント分野)において実施している。
5 大学院設置基準第14条に定める教育方法の特例を実施している(昼夜開講制)。
6 学位プログラム・専攻を横断する教育研究活動として、「学術院・研究群FD プログラム」、「学生の集い」、国際交流協定締結機関との協働教育などの独自の取り組みを展開している。
7 武者修行型学修派遣支援や海外学会発表旅費支援などにより、学生の海外における学修・研究活動を支援し、学生のグローバル化を推進している。